同じこころで
私はお茶が身近な環境で育ちました。今までに様々な美味しいものをいただいてきましたが、茶懐石で初めにいただくひとくちのご飯、これこそが何よりも美味しいと思っています。茶懐石は、お茶事で後の濃茶を美味しくいただくために供されるもの。旬の食材を用い、飾り包丁といった細工などもしない無駄をそぎ落とした茶懐石は家庭料理の原点でもあります。本来は4人くらいの少人数で行われるお茶事。お越しいただくお客様を想いながら亭主が心を込めて料理します。家族や身近な‘ だれか ’のために作る家庭料理もそれは同じ。茶懐石と家庭の和食。同じおもてなしのこころで作ります。
茶懐石の粋
旬を大切にし、一切の無駄がないシンプルな茶懐石は先人が遺してくれた粋な文化。飾り立てた可愛さとの対極です。おもてなしをこれ見よがしに見せつけるのではなく、還暦のかたのお祝いには蟹と菊が描かれた器を選び、桜の季節を楽しむ演出には花を直接あしらうのではなく色だけで表わす奥ゆかしさ…なんてすてきな大人の想像遊び。日本の美そのものともいえる茶懐石に親しむことで、より豊かな毎日を楽しんでください。本来は身近で質素な素材を使い、お客様を想いながら手間暇かけて料理する茶懐石。料理だけではなく、茶懐石の‘こころ’もお伝えします。
まずはおだし
茶懐石と家庭料理、いずれにしても和食に欠かせないのがおだし。おだしをしっかり取って、素材の味を引き出すためにごく少量の調味料を使います。きちんとしたおだしがとれて、素材を見る目ができあがれば和食の8割くらいの腕はできあがっているのではないかと思うほど。油で旨みをつけたり、砂糖などで濃く甘辛くしてしまうのは、きちんとしたおだしが取れていないから。けれども料亭のように花かつおを使って火加減、タイミングに気を遣って作るのはとても面倒なこと。そこで料亭とは違った簡単、手軽に美味しいおだしが取れる家庭での方法。まずはここからお教えします。
今日から
始められる
和ごはん
時間や手間の短縮にはフードプロセッサなどの新しい調理器具も活用しますし、和食にはあまり使われてこなかったオーブンも、ほっこりした仕上がりが美味しい素材にとっては頼もしいもの。そしてその素材には魚だけでなく、肉類や新しい野菜を使って伝統の味に今の美味しさをプラス。昔ながらの日本料理を崩しすぎることなく、忙しい現代にあわせて毎日に取り組みやすい和ごはんを提案しています。茶懐石と同じように、‘だれか’のためにこころを込めて作る家庭料理。そんなこころが込められた家庭料理には必ず癒されます。イタリアにもフランスにも、もちろん癒される家庭料理はあります。けれども日本で育った私たちにはやはり食べ慣れた和食でしょう。食べ慣れているうえ、和食は身体にも優しく、日本人の身体には最も合ったお料理です。作りやすくアレンジしていますので、ご自分のため、特別な‘だれか’のためにぜひ今日から和ごはん、作ってさしあげてください。きっと心まで豊かにしてくれます。